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第7話 南青山の夜

Penulis: 藤永ゆいか
last update Tanggal publikasi: 2026-06-23 20:00:00

日曜日の夕方──二度目の食事の約束の日、私はクローゼットの前で途方に暮れていた。

黒瀬さんから指定されたのは、南青山のイタリアンレストランだった。

店名を検索した瞬間、画面の向こうから漂ってくるような気品に、思わず顔が引きつった。

ミシュランの星つき。完全予約制。ドレスコードあり。

前回のホテルのラウンジより、さらに格が上だ。

悩んだ末、選んだのはネイビーのドレスだった。

シンプルなAラインで、決して安物ではないけれど、今夜の店に並ぶであろうドレスたちと比べたら、きっと見劣りする。

鏡の前に立って、自分で施した化粧を確認する。

今夜こそ、完璧に演じきる。仕事の話をされても、モデルの仕事一本で通す。本音は、絶対に出さない。

姉からの電話が、昨日もあった。「もたもたしないで」という声が、まだ耳の奥に残っている。

タクシーを降りた瞬間、空気が変わった。

表参道の喧騒から一本路地に入っただけで、街の音がすうっと遠のく。

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  • 身代わりお見合いの花嫁〜冷徹社長は偽りの愛を見抜いている〜   第5話 鳴らないはずの電話

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  • 身代わりお見合いの花嫁〜冷徹社長は偽りの愛を見抜いている〜   第4話 終わったはずが

    『先程は、お時間をいただきありがとうございました。──黒瀬柊』彼からのメッセージは、それだけだと思っていた。数秒後、同じ番号から、もう一通届いた。『次回、ご都合の良い日を教えていただければ、合わせます』画面の番号を、もう一度確かめた。間違いない、黒瀬さんからだ。お見合いの書類に載っているのは、姉の連絡先のはず。さっき、私が口頭で伝えた番号──黒瀬さんはそちらに送ってきたのか。「合わせます」という一言。感情がない、と思った。温かくもなく、冷たくもなく、ただ的確だ。

  • 身代わりお見合いの花嫁〜冷徹社長は偽りの愛を見抜いている〜   第2話 偽物の名前

    ゆっくりと扉を開け、一歩足を踏み入れた瞬間、思わず立ち止まりそうになった。高い天井に広がる、クリスタルのシャンデリア。香ばしいコーヒーの香りと、白く気高く咲き誇る大輪の胡蝶蘭。磨き上げられた大理石の床に、自分が履いている安物のヒールの音がカツカツと不躾に響く気がして、それだけで萎縮しそうになる。場違いにもほどがある……。心の中で小さく呟き、緊張で強張りそうになる手を、そっとドレスの上の膝に置いた。ここで怯んだら、一瞬で「偽物」だと見破られてしまう。案内された席に着いた瞬間、背筋が自然と真っ直ぐに伸びた。膝を揃えて座る。手をテーブルに乗せない。視線を落としすぎないように前を向く。

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